タマネギのべと病を回避するには

タマネギは様々な料理に使用でき、収穫後も長期間の保管がきくことから、家庭菜園で人気の野菜です。OATアグリオの栽培研究センターがある四国地域では、9月頃に播種して、11月に本圃に定植、そのまま冬を越して6月上旬に収穫するという栽培体系が一般的です。

栽培期間は約9カ月程度と長期間にわたるため、様々な病害虫の被害が問題になります。病気ではべと病、灰色かび病、軟腐病、鱗片腐敗病、害虫ではアザミウマ類(とくにネギアザミウマ)、ネギコガ、ネギハモグリバエ、ネギアブラムシなどに注意する必要があります。

その中でもべと病は、感染が広がると抑えるのが難しく、圃場全体が急速に被害を受けてしまう恐ろしい病気です。今回はタマネギのべと病を回避するにはどうしたらいいのか、その方法についてお話ししたいと思います。

タマネギべと病の生態

タマネギのべと病は、卵菌類と呼ばれる菌類によって引き起こされる病気で、原因となる菌は土の中に潜んでいます。
雨が降るとその胞子からできた遊走子嚢(分生子)が跳ね返った水滴とともに植物に付着し感染が起こります。
この菌は15℃程度の低温が好きなので、タマネギの生育期である3~5月に長雨があると急速に広がり、収穫を目前として甚大な被害を出すことになります。

             タマネギのべと病の遊走子嚢(分生子)
      この中に遊走子が詰まっていて、雨が降ると遊走子が泳ぐように出てくる。

そのため、一見すると春の病気に見えるべと病ですが、実は圃場の中では定植後(10~12月頃)からすでに感染が起きています。その感染株が翌年の2月頃に発病し、1次感染源となってしまいます。

写真右下の株が1次感染したタマネギ(2023年3月下旬)。周りの株と比較すると生長が遅く葉が湾曲しています。湾曲した部分には灰白色の胞子ができています。
この後速やかに抜き取り、薬剤による防除を行いました。

べと病は予防が重要

前述のとおり、原因となる菌は土の中に潜んでいますので、前の年にタマネギを栽培してべと病が多発した圃場だと、次の年もタマネギべと病が多発します。
そのため、タマネギのべと病を出さないようするには、前の年にタマネギを栽培した圃場を避けて栽培することに加え、少しでも感染株が認められた場合はすぐに抜き取るのが、一番の予防法になります。

ただ、限られた圃場の中、栽培する圃場を毎年変えるのも難しいですよね。
そのような場合には、薬剤による防除が重要になってきます。

薬剤による防除は、
➀ 1次感染源を出さない初期防除の徹底
② 早春からの作用の異なる薬剤のローテーション防除
が基本になります。

まず、定植から20日程度経過し、1次感染が起こるタイミングで予防効果が優れた剤を散布します。この防除で翌年のべと病の発生がかなり抑えられることがわかっています。
その後、徐々に気温が上がってくる3月頃から、予防効果と治療効果を兼ね備えた薬剤を2週間に1回程度散布して、防除の徹底を心掛けます。

その際には、作用の異なる薬剤(農薬のラベルに記載されているFRACコードを参考にする)をローテーションで散布するようにしましょう。
防除していても感染株が出てくる場合は、発見次第抜き取り圃場の外に持ち出すことが重要になります。

最後に

今回はタマネギのべと病についてお話しました。きれいなタマネギを収穫するために、少しでも参考になれば幸いです。