食虫植物に関する研究

※2025年3月21日~6月15日に実施した自由研究コンテストの入選作品です。
サイト掲載にあたり、一部文言や流れの変更・画像の修正を行っております。

「ご近所を病気から守りたいので、食虫植物に害虫を食べてもらおう」と思ったのが今回の研究のきっかけです。しかしながら、食虫植物でも小さい植物では捕虫能力が低そうですし、調べている中で、食虫植物は捕虫することで枯れてしまったり、寿命が縮んでしまったりすることがあると知りました。
そこで、以前研究したミドリムシ(「ミドリムシは植物と言えるか」の栄養に着目し、食虫植物の捕虫能力を上げることができるか調べてみました。

疑問➀ ハエトリグサとモウセンゴケは小さくても蚊等の害虫を効率よく捕虫することができるだろうか?
疑問➁ ミドリムシを肥料に加えた食虫植物と水道水のみで育てたハエトリグサとモウセンゴケでは、捕虫の能力に差が出るのだろうか?

→ハエトリグサやモウセンゴケ等の食虫植物はミドリムシの栄養で育てることができて、その消化液により、蚊等の害虫を捕虫し、溶かすことができるかもしれない

ミドリムシの栄養によって、ハエトリグサが捕虫することができることを証明し、その過程を解明したいと思っています。害虫を実際に溶かしている様子を明らかにした研究はないようですし、どのような分野に応用できるかについても考えてみたいと思っています。

準備するもの

・ミドリムシ
→今回は、和香さまの「ミドリムシ ユーグレナ500ml」を基に、都内の河川で採取した自然のミドリムシを培養して混ぜたものを希釈して使用しています。

・食虫植物

方法

ミドリムシ希釈液で育てた食虫植物と水で育てた食虫植物の様子を観察する

今回の結果

まずは、2025年3月1日から約3カ月間に渡り、上段で育てていたハエトリグサ等を観察してみました。
大事な食虫植物を枯れさせたくなかったので、捕虫の手伝いをしたいと思い、虫コナーズを鉢植えの近くにかけて、定期的に交換していました。1日約20匹の害虫がかかっていました。

食虫植物は、日中、日光が当たらない場所で栽培しました。左側の写真が水のみで育てたモウセンゴケとハエトリグサ、真ん中の写真がミドリムシをかけて育てた食虫植物の様子です。6月に入ると、ミドリムシをあたえた方のモウセンゴケは桃色の花を咲かせ始めました(右側の写真)。
水のみで育てた方は、ミドリムシをあたえている方と比べると生長があまり良くなかったです。

6月8日午前9時

ミドリムシをあたえているハエトリグサがガガンボを捕虫しました。

6月10日

6月10日になっても溶かす様子は観察できませんでした。栄養がまだ足りないのか、植物が小さすぎるのか、理由は分かりません。
上の写真でも分かる通り、小さい飲料のキャップ位の体長や胴体の模様から、アカイエカではなくガガンボと判断しました。

また、ミドリムシをあたえている方のハエトリグサが、新たにユスリカを2匹捕虫しました。

6月11日午前9時

ハエトリグサの捕虫器が閉じていました。おそらく、感覚毛に再び触れたため、閉じたと思われます。当初、脚2本が飛び出ていましたが、同日午後13時半頃になると、脚が1本になっていました。
ガガンボの脚が1本になっていたのは、消化・吸収の効果なのかは分かりません。捕虫葉の閉じる力はとても強いので、昆虫の体液を絞り出したのかもしれないです。

6月12日17時半頃

ハエトリグサの捕虫器の皮の部分にもアカイエカのような虫が粘着していたのを発見。頭頂部には白い卵のような物が付着。あるいは、捕虫された虫が表面に飛び出てしまったのかもしれません。

6月15日午前8時頃

ガガンボを捕らえていたハエトリグサの捕虫器が少し開いていました。中を見たところ、羽根と見られる部分のみが残っていました。
家族と一緒に調べたところ、ムシの羽根はキチン質で出来ているので、消化しにくかったと考えました。

6月15日午前18時頃

約10時間前に確認できた羽の部分が消えていました。また、小さい捕虫器が2つ生えてきたのを確認。ユスリカを捕虫した葉は、閉じたままでした。

これまでのハエトリグサの捕虫器の開閉の様子を表にまとめました。

※6月8日午前9時に捕虫(ガガンボ)

捕虫から約72時間後、捕虫葉が閉じたのを確認しましたが、消化液を出して、昆虫の栄養を消化・吸収したとみられるのは、約157時間後(約1週間後)でした。

ミドリムシをかけたグループのモウセンゴケの開花を確認した頃、たくさんの虫が捕虫されているのを確認。
捕虫の能力については、ミドリムシをあたえて育てている食虫植物の方が捕虫された虫が多かったため、ミドリムシにより捕虫能力が高められたように思います。

今後の課題

今回の自由研究では、ハエトリグサの捕虫が葉の表面で獲物を効率良く捉えて分解(消化)しようとする前段階までは確認できました。この段階で運悪く粘性のある分泌液により身動きがとれなくなったガガンボとユスリカ、アカイエカと見られる虫を確認できました。

今後は、モウセンゴケの捕虫の様子をあらためて確認したいと思っています。加えて、『食虫植物の粘り気のある消化液やミドリムシのすじりもじりダンスする力を借りた様々な試み』にチャレンジしたいです。例えば、『血液中の害のある物質を溶かす薬を作ったり、ロケットの燃料にして宇宙に行ってみたりしたい』。
ハエトリグサで得られた知見には謎も多いし、それが他の食虫植物に当てはまるかどうかは、調べてみないと分かりません。これらの自由研究を通して、ダーウィンのような研究者になりたいと思いました。

用語説明

アカイエカ
住宅地に多い蚊で、防火用水や下水に寄生する。夕方から夜間に吸血する傾向があり、フィラリアをまれに媒介すると言われている。体長は約6㎜である。

ガガンボ
見た目が蚊に似ているが、体長は約2㎝の羽虫である。細長い脚が鶴の脚に似ている。腐食物質や植物の根を主食とし、脚は脆く抜けやすいため、食品の製造現場等では、異物混入の害になり易い。

キチン質
昆虫や甲殻類の外骨格やカビやキノコ等の細胞壁を構成する物質。

ハエトリグサ
ごく背の低い草本で、茎は短縮していて地中にあってわずかに横に這う。葉の付け根は肥大し、6本の感覚毛とともに鱗茎型の球根を形成する。虫を匂いでおびき寄せて溶かして栄養にしてしまう。捕虫器は二枚貝のような形で、周辺にはとげが並ぶ。虫を能動的に捉えられる食虫植物として有名。ダンゴムシ等が30秒以内に2回感覚毛に触れると0.3秒の速さで葉を閉じてしまう。北米大陸に生息する。

フィラリア
犬や猫に寄生し、咳や息切れ、倦怠感の原因となる線虫。

ミドリムシ
春から夏にかけて淡水で見られる生物である。0.1㎜以下の単細胞生物であり、紡錘形をしている。細胞全体は伸び縮みしたり、くねったりという独特のすじりもじり運動を行う。葉緑体があり植物の性質を持つが、他方で、ヘマトクロットという眼球に相当する動物的な機能も備えている。

虫コナーズ
吊るすだけの虫避剤で、とりわけ、ユスリカやチョウバエ等の小型の害虫を捕虫する。

モウセンゴケ
湿地に生育する種子植物。日当たりの良い場所に育つものでは、粘毛は赤く色づき、一面に生育している場所では毛氈を敷いたように見える。葉の表面に粘毛があり捕虫するが、モウセンゴケトリバの幼虫は耐性を持つので天敵。

ユスリカ
人を刺すことはないが、大量に発生することがあるので、窓が開けられなかったり、洗濯物の汚れの原因になったりする。ユスリカを抗原としたアレルギー性鼻炎や呼吸器疾患があることも知られている。