農薬

OATアグリオは、農薬・肥料・システムなど世界の食糧増産に貢献する製品開発を行っている会社です。
今回のコラムでは、その製品の中の1つである農薬についてお話したいと思います。

農薬とは

作物を栽培されている方はどのようなものかよくご存知かもしれませんが、あまり詳しくない、という方が大半かと思います方も多いかと思います。

農薬取締法では、農薬とは、農作物の病害虫の防除に用いる殺菌剤、殺虫剤、除草剤その他の薬剤及び農作物の生理機能の増進又は抑制に用いる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤を農薬と定義しています。

病害虫、雑草から農作物を守るために使われる薬剤が「農薬」ということになりますね。

農薬の歴史

それでは、このような農薬はいつ頃から使われるようになったのでしょうか。

日本で有効な害虫防除法の記録が残っているのは江戸時代のことです。田んぼに鯨の油を流してイネに寄生するウンカを窒息させて退治する、「油流し」が記録されています。

また、ヨーロッパでは1882年に、硫酸銅と石灰を混ぜた溶液が、ブドウで問題となっていたべと病に対して効果があることが認められました。

しかしながら、この頃にはまだ有効的な防除法は少なく、世界の各地で病害虫の被害による飢饉が起こるなど、安定した食糧生産が難しい状況が続きました。

化学農薬が本格的に使われるようになったのは1950年代です。農家さんは病害虫の脅威や炎天下での草抜きからも解放され、食糧生産の効率が飛躍的に向上しました。

ただ、当時の農薬はまだ規制も緩く、中には人や環境への影響が大きいものもありましたので、作業中の事故もしばしば報告されていました。一部では農薬に対して悪いイメージを持たれる方もいますが、それはこの時に使用されていた農薬のイメージが強いのかもしれませんね。

1971年には農薬取締法の改正が実施され、作物に残留する農薬や、人や環境に影響の大きい農薬への規制が始まり、現在は厳しい審査を受けながら、より安全性の高い農薬が開発されるようになりました。

OATアグリオでは、食品、食品添加物および天然物などを有効成分としている防除資材(農薬)の開発も行っています。詳しくは、すでに掲載済みのコラム「グリーンプロダクツ」をご覧ください。

農薬を使う理由

農作物を病気や虫、雑草などから守るために使う薬剤が農薬、といいましたが、病気や虫だけでどれくらい作物がダメージを受けるかご存知でしょうか。

実は、予想される収穫量の約40%が病害虫の被害を受けると言われています。
美味しそうなご飯がまとまって栽培されている、となると虫や病気もそこに集まってしまいますよね…。

農薬は、適切に使われることでその被害を減らし、安定的な量・品質の確保や商品価値を高めることに役立っています。

ちなみに、現在の世界の農耕地は約15億ha(ヘクタール)といわれていますが、農薬を使わずに世界の人口をまかなうためには40億ha以上の農耕地が必要となるそうです。農薬を使わない場合の生産の大変さが分かりますね。

作物を育てるには、本当に多くの労力が必要となります。
その労力の1つである、除草作業を考えると作業効率化への貢献が分かりやすいかもしれません。

水田10a(アール)当たりの除草を手作業で行う場合、どれくらい時間がかかるかご存知でしょうか。

1949年に調べられた結果では、約50時間もかかっていたそうです。
この作業が、農薬を使用することで2020年には約1時間しかかからないようになりました。
50時間かかる作業が1時間で済むようになれば、残りの時間を別の作業に使うこともできますし、とても助かりますよね。

このように、農業の担い手が減り高齢化が進んでいる中、効率的に安定的な生産を行うために使われるものの1つとして農薬があるのです。

農薬が効く仕組み

農薬は、使用した場所の病気や虫、生き物を無差別に殺してしまうようなものではありません。多くは、防除したい病害虫だけに作用したり、その増殖や行動を抑えたりすることで作物への被害を減らします。

対象の病害虫などへの効果の発揮方法も各農薬で異なります。
例えば、虫に使用する農薬薬剤でも、作用方法は、情報伝達を阻害する、必要なエネルギーの生産を阻害する、脱皮による成長を阻害するなど様々です。

各農薬は、どのような作用で効果を発揮するかによって分類され、RACコードというものがつけられています。虫への作用はIRAC、病気への作用はFRAC、雑草への作用はHRACがつけられています。詳しくは、JCPA農薬工業会のサイトなどに掲載されています。
気になる方は調べてみてくださいね。

最後に

今回は農薬についてお話しました。
農薬の必要性や有用性など、少しでも農薬への理解を深めていただければ幸いです。