バイオテクノロジーの第一歩? 植物の無菌培養に挑戦!

バイオテクノロジーと聞いて、みなさんは何を想像されるでしょうか。たいていのバイオテクノロジーは対象の生き物を飼育・栽培することから始まります。特に無菌状態で生き物を育てることができれば、雑菌の影響を排除して実験することが可能になります。
今回は、家庭で用意できる材料を用いて、植物の無菌培養に挑戦してみましょう!

準備するもの

・電子レンジ対応のガラス瓶
(今回は、高さ7 cm×直径7.8 cm, 240 mLの耐熱ガラス容器を使用)
・養分となる肥料(今回はベジタブルライフA)
・寒天(糖分などが含まれていないもの)
・計量カップ
・キッチンスケール(0.1 g単位で測れる機種がオススメ)
・植物の種子(農薬などがコーティングされていないもの、今回はコマツナを使用)
・家庭用塩素系漂白剤
・無水エタノール(薬局やネット通販で購入できます。)
・種子消毒用の容器
・ピンセット
・チャッカマン
・ピペット(あると便利、ネット通販で使い捨てのものが安く販売されています)

方法

作業を始める前に、手や作業スペースの消毒をします。手は石鹸で丁寧に洗ったあと、70 %エタノールで消毒します。
70%エタノールは、水道水で無水エタノールを70 %に薄めて作成します。無水エタノール100 mLに対し水道水42.8 mLを加えると約70 %となります。消毒用なので濃度は多少ずれて構いません。作成した70%エタノールは、霧吹きに入れておくと使いやすいです。
作業するテーブルやピンセットは、70 %エタノールを霧吹きで吹きかけた後、キッチンペーパーなどで拭き取って清潔にします。

①ベジタブルライフAを 200倍に薄める(今回は計量カップで水道水 100 mLを測り、ピペットでベジタブルライフAを0.5 mL加えました。)

②電子レンジ対応のガラス瓶に、①で薄めた液肥を高さ1~2 cm程度まで入れる。その後液肥の1 % になるよう寒天を加え、瓶を揺すってよく混ぜる(今回は液肥 50 mL に対し寒天 0.5 g)。

③電子レンジに入れて加熱。これにより寒天を溶かすとともに、培地の滅菌を行う(今回使用したガラス瓶は、フタつきのままレンジ可だったので、フタをして500 W、2分弱で加熱しました)。

※電子レンジで加熱し続けると、培地が沸騰して吹きこぼれます。レンジの中の様子を見ながら、沸騰し始めたら直ちに加熱を止めて取り出し、瓶を揺すって培地を混ぜます。これを3~4回繰り返し、寒天を完全に溶かします。ガラス瓶が非常に熱くなるので、ミトン手袋などを着用しましょう。この作業は大人が担当した方がよいかもしれません。

④培地が冷えて固まるのを待つ。電子レンジから出した後は雑菌の混入を防ぐため、フタを開けないようにする。

⑤培地が固まったら、あらかじめ5倍に薄めた家庭用塩素系漂白剤に種を10分間浸した後、70 %エタノールに3分間浸して消毒を行う。
※ 長く浸しすぎると種まで死んで発芽しなくなるため、タイマーをセットしておくのがオススメです。

⑥チャッカマン等でピンセットの先端部分(種をつまむ部分のみ)を炙り、火炎滅菌を行う。炙った後は雑菌が付着しないよう、ピンセットが机などに触れないように置いて冷ます。

※火を扱うので火傷には十分注意して作業してください。
※種子消毒と同時並行で作業している場合は、エタノールに引火しないよう、十分離れて作業してください。万が一引火した場合は、濡れ雑巾でエタノールの容器を覆って消火します。

⑦種をエタノールに3分間浸し終わったらすぐに、火炎滅菌して冷ましたピンセットで種をつまみ、慎重かつ素早くフタをあけて培地の上に置き、素早くフタをする。滅菌されていない部分や指が触れると雑菌が混入しやすくなるため、注意。

⑧種をまいた後は涼しくて明るい部屋に置き、生長具合を観察。
※温度は20~25℃程度が理想。直射日光があたると蒸れてしまうので、そのような場所には置かないようにしましょう。
※カビなどが生えてきてしまった場合は、熱湯を回しかけるなどして消毒して処分します。

今回の結果

今回は瓶を3個用意し、1個に2粒ずつ種をまきました。

早くも発芽しました。ふわっとした根毛がよく見えます。

子葉(双葉)が見え始めました。

写真では見づらいですが、小さい本葉が出てきました。温度管理ができず高温になりがちなせいか、徒長気味でフタに葉っぱがつくようになってしまいました。

今日で観察を終了するので、フタを開けてコマツナを取り出しました。左の1瓶は途中で黒と白のかびが生えてきてしまいましたが、他の2瓶は最後まで雑菌の汚染はありませんでした。
本葉2~3枚まで育ちましたが、温度が高かったためか、徒長してモヤシっぽくなっていますね…。夏場は温度管理が難しいです。

最後に

無菌操作は慣れると簡単ですが、経験がないと少し難しいので、自由研究としては上級者向けの部類かもしれません。薬品や熱い培地を扱うので、くれぐれも事故には気をつけてください。
今回はコマツナを使いましたが、ほかの種類の植物で試すのも面白いかと思います。また、無菌栽培がうまくできるようになったら、肥料や寒天の濃度を変えたり、ほかの物質(例えば砂糖とか塩とか)を混ぜてみたり、瓶の置き場所を変えたりして、植物の生長の違いを観察するなど、いろいろ試すことができますよ。

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