植物の防衛システム? 花外蜜腺の観察

動物と違って植物は、敵に襲われても逃げることができないため、自身を守る様々な防衛手段を発達させました。例えば鋭いとげや、お腹を壊させる毒素などですね。そうした防衛手段の1つに、「用心棒を雇う」戦略があります。花外蜜腺(かがいみつせん)といって、茎や葉などにある蜜腺から蜜を分泌してアリにあたえる代わりに、害虫を追い払ってもらいます。実はこの戦略、意外と多くの植物が採用していて、街中に生えている植物でも観察することができます。身の回りの植物に目を向けて、自然界のせめぎ合いを観察してみませんか?

準備するもの

ルーペ・虫眼鏡やカメラ、植物の種類を調べるための図鑑などがあると役立ちます。

方法

①花外蜜腺がある植物はカラスノエンドウ、ソラマメ、ササゲ(マメ科)、サクラ、モッコウバラ(バラ科)、アカメガシワ(トウダイグサ科)、イタドリ(タデ科)などが有名です。河川敷や公園、街路樹の植え込みなど植物が生えている場所を探してみましょう。

今回の結果

まず見つけたのはカラスノエンドウでした。莢の付け根に小さい葉(托葉(たくよう)といいます)があり、そこに黒い点(黄色矢印)がありますね。これがカラスノエンドウの花外蜜腺です。

続いて、花が散ったあとのサクラ(ソメイヨシノ)を見てみましょう。一見何の特徴もない葉に見えますが・・・
ルーペで拡大してみると葉の付け根に丸く膨らんだ蜜腺(黄色円)がありました。スマホのレンズにルーペをあてて撮影すると、ちょっとした実体顕微鏡ですね。

最後にご紹介するのは、赤い新芽が特徴のアカメガシワです。鳥が好む実をつけるので、食べられた種が糞に混じり、あちこちから生えてくるたくましい樹木です。これも葉の付け根に蜜腺があります(黄色矢印)。ちょうどアリがたかっていますね。

最後に

今回は花外蜜腺をもつ植物を3種類観察しました。様々な種類の植物が花外蜜腺をもつことが知られているので、探せばもっと見つかるでしょう。花外蜜腺にどんな種類の虫が集まるのかを調べるのも面白そうです。

おまけ

花外蜜腺はこれまでも多くの研究者の興味を惹いていて、植物を食害する昆虫の排除にどのくらい貢献しているのかなどの研究も行われています。

ところで、植物に寄生するアブラムシも蜜(甘露)を分泌してアリを呼び寄せ、テントウムシなどの天敵から守ってもらっています。それでは、花外蜜腺をもつ植物にアブラムシが寄生した場合、アリはどちらを守るのでしょうか? これは複雑な問題で、まだよく分かっていないことも多いのですが、蜜の量や質によってどちらがアリに守ってもらえるか変わる可能性があるようです(研究はこちら)。街中でも激しい生存競争が行われていることが感じられますね。

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