葉脈標本をつくってみよう

植物の葉っぱをよく見ると細かい線がたくさんあるのが見えますよね。
植物は根から吸った水や葉で作った栄養分をこの細い線を通して、全体に行き渡らせています。人間でいうと血管と同じような役割を持っているこの細い線は、「葉脈」といいます。
今回はこの葉脈をより見やすい形にして、標本をつくってみましょう。

準備するもの

・標本にしたい葉(厚めでしっかりした葉がオススメ)
・重曹
・鍋(アルミ製以外)
・歯ブラシ(使い古しでOK)
・新聞紙
・計量カップ
・キッチンスケール
・ゴム手袋(手の汚れが気になる場合)

方法

➀鍋に水を入れ、鍋に入れた水量の10%となるように重曹の量を測っておく。
(今回は水1Lに対して重曹100g)

➁鍋を火にかけ、沸騰したら測っていた重曹を入れる。

➂重曹が溶けたら用意していた葉っぱを投入し、葉の色が暗緑色になるまで茹で、葉肉を柔らかくする。

➃葉肉が柔らかくなったら、葉を取り出し、新聞紙の上に置いて、水をつけた歯ブラシで葉肉をこする。
※紙皿などに水を入れておくと、とれた葉肉を洗いやすかったです。

今回の結果

今回は、家にある植物と近所の山にある植物から、アジサイ、ロウバイ、フジ、オリーブ、モミジ、ホヤ、サトザクラの葉を採取してみました。

写真は煮込んだ後の様子です。アジサイは10分ほどですぐにやわらかくなりましたが、他は1時間ほど煮込みました(サトザクラのみ写真に写せていませんでした…)。

歯ブラシで少しずつ葉肉を削った様子がこちらです。

左からオリーブ、モミジ、フジ、サトザクラです。
葉の縁部分など、葉肉が残ってしまっていますが、葉脈部分を出すことには成功しました。
個人的には、歯ブラシで叩くようにする方が削りやすかったです。

アジサイは葉が柔らかすぎてすぐに破けてしまい、標本をつくることができませんでした。
採取した時にはしっかりしているように感じたロウバイも意外と柔らかくて難しく、写真に写せる形にはできませんでした。

逆にホヤは、葉が厚すぎたのか葉肉を削ることが難しかったです。もっと煮込まないといけなかったのかもしれません。

最後に

葉脈標本に使う葉は、厚めでしっかりしたものがオススメ、ということが身をもって体験できました。しかしながら、ホヤのように厚すぎると逆に葉肉がはがれにくいことも分かりましたので、ちょうどよい厚さを選ぶか、煮込み時間を変える必要がありそうです。

おまけ➀

漂白剤につけて葉を白くした後、マニキュアを塗って色をつけてみました。
好きな色をつける作業も楽しくて良いかもしれません。

おまけ➁

パイプ洗浄剤やキッチンハイターでも葉脈標本を作製できるとのことで、挑戦してみました。こちらの方法の場合は、皮膚につかないように注意しながら、大人の方と一緒に行うようにしましょう。

方法
①葉をガラス容器に入れ、葉が浸るまでパイプ洗浄剤やキッチンハイターを注ぐ。ハイターが皮膚に付着しないよう、必要に応じてゴム手袋を着用。

②葉とパイプ洗浄剤orキッチンハイターを入れたガラス容器を小鍋に入れて湯煎する。時間は葉の状態を見て調整。(今回の結果も参考にしてください)

注)沸騰させると危険なので、湯煎する際は火を止めます。特に、パイプ洗浄剤やハイターは眼に入ると危険なので取り扱いには注意してください。また換気も十分に行ってください。火傷の恐れもあるので、次の③までの作業は大人が一緒に行うようにしましょう。

③葉が脱色して白くなり、柔らかくなったら取り出して水で丁寧に洗う。水を張った容器を用意し、しゃぶしゃぶの要領で葉をゆすぐと破れにくいです。

④浅く水を張ったバットに葉を置き、歯ブラシで葉肉を取り除く。歯ブラシで叩くようにするときれいに剥がれます。時間をかけて根気よく取り除きましょう。

⑤葉肉が取れたら乾かして完成です。

結果

今回は、左からヤブガラシ、ケヤキ、カシ類、ソメイヨシノの葉を準備しました。樹木の厚めの葉であるカシの葉が本命ですが、重曹とは違う方法とのことで、再度柔らかめの葉も試してみました。

ヤブガラシはほんの数分であっという間に脱色し、真っ白になりました。ケヤキとソメイヨシノがそれに続き、10~15分くらいで概ね色が抜けました。真ん中にある太い葉脈(主脈)は色が残ったままですが、どうやらアントシアニンが蓄積しているためのようです。今回はこのまま作業しましたが、一晩水にさらして置いたら色が抜けたかもしれません。

カシの葉は30分ほどでようやく写真の状態。全然柔らかくなっていなかったので、一晩ハイター液のなかで放置したところ、色はほぼ完全に脱色されました。

歯ブラシで叩いて葉肉を取り除き、乾かした後の様子(左;ケヤキ、右;カシ)。

ケヤキはそれなりに葉肉がはがれ、網状の葉脈が見えるようになりました。一方、本命だったカシの葉は、ハイターでは力不足だったのか、力を相当入れてもなかなか葉肉がはがれず、取り残しや破れが目立つ状態に…。
また両方とも、乾燥時に葉の縁が巻き上がってしまいました。きれいな標本にするにはもう少し工夫が必要なようです。
そしてヤブガラシとソメイヨシノは流石に柔らかすぎたのか、お見せできないほどぼろぼろになってしまいました。やはりちょうどよい厚さの葉を選ぶことが大事そうです。

おまけ➂

教科書では単子葉類は平行脈、双子葉類は網状脈と書かれているかもしれません。ただし、これはそういう種類が多いというだけで、実際にはサトイモやサルトリイバラのように単子葉類でも網状脈をもつ植物もいますし、オオバコのように双子葉植物だけど平行脈をもつ植物もいます。葉脈の形から、生き物の多様性に気がつくこともありますね。

さて、葉脈はかなり複雑な構造になっていることが分かったと思いますが、どうやってこの複雑な形が作られるのでしょうか。有力な説として、植物ホルモンのオーキシンに多く触れた細胞がますますオーキシンを流しやすくなり、一定の量を超えると葉脈に分化するという、「運河仮説」が提唱されています。現在でもオーキシンの輸送を制御するタンパク質の特定や、運河仮説に基づく数理モデルの構築など、日々研究が進められています。

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